自分の研究がクソだと思っていた大学院生が何とか100ページ超の修士論文を作り上げた話

2月の修士論文の発表に向けて忙しい大学院2年生の皆さんこんにちは。

この記事を開いたということは多分、修論の締切や自分の研究のクソさに嫌気がさして何か心の安心材料が欲しい人が多数かと思います。

かく言う私も去年の今頃は修士論文を急いで書き始めて焦っていたことを覚えています。そこから1か月半程度で100ページ超を書き上げました。(出来は微妙すぎて2度と読み返したくはないですが…)

現在はこうして新社会人として働けているので一応しかるべき審査は通過したんだと思います…多分…

今回はそんな根はクソな私がどうやって修士論文を乗り切ったのかを書いていこうと思います。

目次

修士論文を書くための5箇条

  1. 先輩が書いた過去の修士論文を見直そう
  2. 参考文献は沢山入れよう
  3. 図は1又は2つで1ページを使うくらいデカデカと
  4. フォーマットを作ってパターンワークに落とし込もう
  5. 付録をつけよう

以下に一つ一つ解説していきます。

1. 先輩が書いた過去の修士論文を見直そう

これに関しては二つの意義があります。それと言うのも

  • 自分の所属している大学院・研究室はどの程度の分量を書けば修了できるのか
  • (特に研究背景に関して)どのような背景・論理展開で自分の研究の意義を語っているか

を決定するためだと思っています。

まず一つ目の事項についてですが、修士論文の分量としては社会通念として100P以上とか言われることが多いですが、明確に規定されている大学院はほぼ無いと思っています。私の大学もページ数の規定はありませんでした。

たまに論文検索の際に、ネットに転がっている他大学の修士論文や卒業論文を見ることがあるかと思いますが、結構少ない分量で纏めている論文もあったりして、

しう

このページ数でも卒業できるの!?

と思ったりします。このように修士論文の分量に関しては大学や自分の研究分野によって千差万別であるので、
「世間的に言われているからこのページ数を書かなくてはいけない」
とかはあまり考えないほうがいいです。

それを意識するより、まずは自分と関連している研究室の先輩たちの平均なページ数を目標にやっていきましょう。

次に二つ目の事項に関してです。

大学や修士の研究内容ってまるっきり新規のテーマであることは少なく、大体は過去先輩がやってきた内容の改良系であることが多いですよね。(まるっきり新規のテーマで頑張っている人はゴメンナサイ。)

そのような場合、研究背景については

現在、社会的に○○のような問題があります

そのような問題を解決するために××という手法があり、
我々の研究室で実施していました

しかしその結果では□□ができないという問題点があり、
△△を改良した手法を研究しました

となることが多いです。

先輩の研究を踏襲している場合、昨年度以前ですでに①と②の部分については審査に通った文章があるというわけです。
もちろんその文章を一言一句そのまま持ってきたら剽窃になってしまいますが、その文章をうまく言い換えて論理展開を利用することはおおいに可能です。

それに加えて③の部分である自分の研究の新規性の文章を付け足せることができるので、ページ数としてはさらに稼ぐことができます。

2. 参考文献は沢山入れよう

修士「論文」である以上、自分の研究の正当性が重要になってきます。

その自分の研究の正当性を担保するものの一つに「参考文献」があります。

これは先ほどの1で説明した研究背景と同様に、過去にどのような研究がされているかについて実際の論文を引用する必要があります。

自分のイメージとしては、

各章ごとに少なくても15本以上は参考文献を入れる必要があるかと思います。
(研究背景・目的の章を含みます。この本数は分野によって違いがあると思うので参考程度に…)

参考文献を入れるところは主に以下の部分です。

  • 研究背景に関わる論文(過去の研究等)
  • 自分の研究に似た研究論文
  • 特殊な専門用語や公式、パラメータを使用する際の元論文

一つ目の「研究背景に関わる論文」に関してはカンタンです。過去の先輩が出した論文や時には先輩の修士論文を引用することもあるでしょう。これに関しては研究を始める前に誰よりも読み込んでいると思いますので、必ず引用しましょう。どこに引用するかというと主に緒言における研究背景・目的だと思います。

各大学によって修士論文のフォーマットは違いますが、一般的に各章の初めにもそれぞれの研究に対する緒言を書くことが多いのでそこでも引用すると良いでしょう。

次に二つ目の「自分の研究に似た論文」に関してですが、これは一つ目と似ていますね。

自分の研究をしている際に躓くことはよくあるかと思います。その際に論文検索をしたことは有りませんか?

例えば実験系であれば

「自分と同じような研究をしている人はどのような手法を用いて結果を出しているのだろう?」

解析系であれば

どのようなソフトを使っているのだろう?どのようなパラメータを使っているのだろう?」

ということを調べるためにがむしゃらに英語論文を読み漁った経験は修士生ならあると思います。

修士論文を書くためには日頃からこのような関連論文を纏めておくと、スムーズに修士論文を書き始めることができます。

ではこのような「自分の研究に似た論文」をどうやって引用するかというと

他の研究との差別化

のために引用することが多いです。これはどういうことかと言うと、例えば

一つ目の過去の研究の続きで

①似たような研究で○○らが実施している□□という研究があるが~~[1]

②△△という点で問題がある。

③そこで本研究では××という点を改良した手法を提案する

というような論理展開をすることが多いです。他の研究と比較して自分の研究のどこが優れているかを意識して書くと良いと思います。

最後に「 特殊な専門用語や公式、パラメータを使用する際の元論文 」ですが、これは自分の研究を説明する部分で良く用います。

一般的に修士論文のような研究では、まるっきり新しい専門用語や公式、パラメータを発明するというよりは既存の専門用語や公式、パラメータをうまく利用して自分の主張の妥当性を高めることが多いです。

修士論文は普通の学会とは違って自分の研究分野とは違う教授陣にも読めるようにしなければなりません。そのため、学部知識では習わないような発展的な専門用語やパラメータに関しては出典を明記するのが普通です。

また出典を明記するだけではなく、用語であればその専門用語の詳しい説明、公式やパラメータであればその導出や意味を詳しく本文で記述することができるのでその分文字数の嵩増しをすることができます。

このような嵩増しできるところで積極的にしておくと良いでしょう。

また、論文引用の方法ですが、これに関しては各分野毎に独自の引用様式があると思います。この様式は結構詳細なもので、一つ一つ手書きで書いていくと莫大な時間がかかります。

そこで便利なのが文献管理ソフトです。

EndNoteと言われれば名前だけでも聞いたことがあるのではないでしょうか?

ただEndNoteは学生版でも20,000円程度かかってしまいます。

そこで無料で使用できる文献管理ソフトとしてMendeleyがあります。

記事が長くなってしまうのでここには使用方法は記載しませんが、無料版でも2GBの容量あり、Wordのプラグインから簡単に参考文献を入れられChromeの拡張機能でWebから論文情報を簡単に収集できる点が便利です。

最後に「あれ…?少し参考文献が少ないな…」と思った時の裏技?を書いておきます。先ほどの参考文献の例3種類の内、「自分の研究に似た論文」はあとから一番追加しやすいです。

そこで「ScirnceDirect」や「J-STAGE」などの論文掲載プラットフォームを活用します。

まず自分の研究と似たキーワードで検索します。そこで出てきた論文に関してScience Directなどの有料論文であってもアブストラクトと図集の一部は無料で確認することができます。

その中で本当に自分の研究と似ているものについてのみダウンロードして確認して問題なければ参考文献として追加します。
MendeleyやEndNoteではScienceDirectの論文ページから論文情報を取得可能なので、参考文献の追加は容易です。
(最悪、アブストだけ読んで入れることも可能ですが、まったく関係ない論文を引用する可能性だったり、バレた際にやばいのでおすすめできません。)

3. 図は1又は2つで1ページを使うくらいデカデカと

論文を書いている際に「図1に…を示す」という感じで写真やグラフを入れたい場合ってありますよね。

このような図を文章中に挿入する際に、皆さんはどのように入れることを想像していますでしょうか?

「図1に…」と書いた文章のすぐ後に対象の図を挿入する場合もあるかと思いますが、私の場合は、

文章は文章のページ、図は図のページで分けて配置していました。

この方法だと図1と指摘した場所と図のページが数ページ離れてしまうことになりますが利点が二つあります。それは

  • 全ての図を大きく載せることができる(=ページ数が少し稼げる)
  • 文章と図を分けることで統一感が出る

一つ目の利点が大きいですね。私の場合は1ページ(見開き半分)で1~2個の図を載せていました。特に強調したいなんかは図一つで1ページ使うことも多かったと思います。このように図の載せ方のルールを決めておくことで、図の大きさやフォーマットが自動的に統一され、見栄えも良くすることができます。

4. フォーマットを作ってパターンワークに落とし込もう

これに関しては分かりにくいのでもう少し詳しく書きますね。

実験でも解析においても手法は同じだけど、条件を少しだけ変えた検討をすることって結構ありますよね。

私の場合そのような各種検討に関して、説明や結果の文章に関してのテンプレートを作成して、結果や図に関してのデータを変えた文章を量産していました。

このようにすることで、最小限の労力で文字数を稼ぐことができます。

修士論文にこんなパターンワークを載せて良いのかという疑問が出てくるかと思いますが、私は良いと考えています。
そのように考える理由として投稿論文と修士論文の目的をの違いがあります。

投稿論文というのは、世の中に向けて自分の研究の優位性を示すものであり、その内容は分かりやすく簡潔であることが求められます。

しかし修士論文はどうでしょうか?修士論文は誰に向けて書くものでしょうか?一般的な回答は審査してくれる教授に対してかと思われますが、これは半分正解で半分間違いだと思っています。

私の感想では主に研究を引き継ぐ研究室の後輩に対してと言う意味合いが強いと感じます。

研究を開始しようとする後輩がまず最初に確認するものってネットに転がっている論文ではなくまずは先輩の研究ですよね。

その先輩の研究が一番網羅的に纏められているのが修士論文です。

なので、修士論文に求められていることとしては、後輩にも分かるように自分の研究が(失敗例も含めて)網羅的に纏められていることだと思います。

そこで、先ほど説明したようなフォーマットを作成して、自分の検討した内容を余すことなく、効率的に記述することで、後輩の役に立ちながら、修論のページ数を稼ぐことができます。

5. 付録をつけよう

上記のように図や文章をでかでかと幅を取って書いたけど思ったよりページ数が書けていないなあ…という問題は往々にしてあることだと思います。

そこで体裁を汚さないでさらなるページ数増量できる技としては付録をつけることです。

付録に記載する内容としては、例えば

  • 今まで参加した学会・発表会における質問回答を詳細に
  • 今まで参加した学会の参加履歴 等
  • 今まで提出した論文のReview時に聞かれた質問回答を詳細に

などです。

特に今までに頂いた質問回答を記述するという点は

①図や詳細な文章を使用することでページ数を稼ぐことができる
②修論発表での質疑応答の準備ができる
③後輩達に自分の研究でよく聞かれる質問を教えることができる

と一石三鳥のメリットがあります。

自分の研究室で使用しているフォーマットを確認して違和感なくこれらの付録を追加することができるなら、追加してみるのも良いでしょう。

自分が修士論文通過できるか不安な人へ

今まであまり成果がないんだけど卒業できるの?

ほぼ99%卒業できます。

以前下の記事でも書きましたが

修士生をもう一年繰り返させるっていうのは結構先生の労力も大きいんですよね。

大体このような悩みを感じるのって本当のクズというよりは真面目だけど容量が悪いコスパの悪い人だと思うので

言い方は悪いですけど、就職予定先に無礼をはたらいてまで、コスパの悪い学生にもう一年労力を割かれるというのは先生としては非常にナンセンスだと感じます。

つまり先生が余程嫌っている学生ではない限り落とそうとしないはずです。

大事なのは

  • 頑張っているアピールをする
  • とりあえず修論を完成させる
  • やばそうなら早めに相談する

この3つだと思います。

ふさぎ込んでしまい連絡が途絶える人が一番タチが悪いです。

とりあえず「自分は修了できるんだ」と気に病まないことが大切です。

修論ができても発表が怖い…

修士論文発表なんて高々20~30分です。そのうち教授から質問されている時間なんて10分程度です。

5~6個質問を答えれば終わります。

自分なんて、本番緊張して7割方カンペを読んで、質問回答の間違いを指摘されても修了できました。

人生の内のたかが10分我慢すれば良いんです。気楽に行きましょう。

まとめ

今回は私の体験談を基に修論を乗り切る方法を解説しました。

自分も修論を必死こいて書いていたので、今この記事を読んでいる皆さんの不安は痛いほどわかります。

皆さんはあまり自分を責めすぎて心を壊さないにしてくださいね。

読者の皆さんが4月に晴れて社会人になれていることを望んでいます。それでは。

目次